これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
期待は外れていたけれど、悪い気はしなかった。
なんか……懐かしい。
勝吾くんとも最初の頃、お互いに毎日のように言い合っては《おやすみ》だけに対して返信しちゃって、キリがないような夜を過ごしていたなあ。
《おやすみなさい》
同じように返して、少し冷めてしまったホットタオルを目に被せた。
「ねえ桜乃、なんか変わったことでもあったでしょ」
「へっ、え、な、ないよ…?」
“でしょ”って断言してくるあたりが、ともちゃんなのだ。
それからの学校生活といえば。
とくに顔を合わせることはなく、ただメールが毎日のように来るぐらいで、《こまめに返すこと》とルールが追加されていたり…。
そんな日々を送っていた私に、ともちゃんは怪しげに見つめてくる。
「スマホ。ずーっと肌身離さず持ち歩いては何度もメールしてるっぽいし。…怪しいなあ?」
「そ、そんなことないよ…!」
潔白を表すためにサッとスマートフォンを机のうえに置いて、代わりにお弁当を手にした。