これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




「はーっ、走った走った!」


「思ったより楽しかったね」


「ね。やる前はすっごい嫌だったけど!案外リレーも楽しいもんなんだねー」



ぞろぞろとグラウンドから校舎へ戻ってゆくなか、ともちゃんと並んだ私の腕がくいっと何者かに引かれた。



「わ…」


「───今日いっしょに帰ろ」


「っ!」



私にしか聞こえない甘さを耳元に好きなだけ広げて、何事も無かったかのように通りすぎていったのは。

そう、その、2年3組に好きな子がいると噂が立っていた例のひと。



「えっ、なに!?なに今の!!ナチュラルすぎてすげえ!!」



ともちゃんでこうなのだから、周りの生徒たちも何のことを言っているのかと視線をキョロキョロ泳がせる。


こんな毎日を私は送っている現在です。



「三好くん…!ごめんね待たせちゃった…?」


「うん」


「え、待たせちゃった…?本当にごめんね…!」


「ふっ、じょーだん。俺も今さっき来たとこ」



私たちがこうして待ち合わせるのは、全校生徒が下校してしばらく経ったあと。

昇降口に立っている彼のもとに駆けつけて、とりあえずは周りを見渡す。


……よし、今は誰もいなさそう。



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