これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
そっと唇が離れると、今度はぎゅっと引き寄せられては包み込まれた。
「こ、こらっ!外ではダメって言ってるのに…!先輩の言うことはちゃんと聞いて三好くんっ」
「はーー、もう、さあ。…こんな可愛かっただなんて、知らなかったんだよ」
「へ…?ひゃっ」
一呼吸つく暇もなく「さくの」と、耳元で甘く囁かれたことにより。
ふにゃりと全身の力なんてものはあっけなくも抜けるわけで。
「これからもずっと一緒にいるんだよ」
「っ、…うん」
耳が、しあわせ。
支えられる身体も、しあわせ。
見えるすべてが、しあわせ。
それでもいちばんは、まっすぐ伝わってくる心が、しあわせだ。
「桜乃、……だいすき」
そう言った彼は、今度は私からの言葉を期待していた。
どんなに私がモジモジとしてうまく言葉を紡げなくても、ずっとずっと待ってくれる。
「わ、私も……だ、だ…、だい、すき、───…奈都くん」
「…!!……破壊力やば」
こんなにも世界はキラキラと輝いていたこと。
伸びた影は生き生きとしていて、笑顔は自然と綻んで、道端の花に雨が降り注ぐように、誰かに優しさをあげたくなること。
そう、きみに出会うまでの私は。