これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「よし、誰もいねえな」
「ともちゃん、口調…」
「あっ、いっけなーい!ついうっかり~!」
「………」
素のともちゃんはわりと、男勝りなところがあって。
見た目はキュートなショートボブに、ふんわり外ハネが似合っている女の子なのだけど、けっこう、勇ましい一面がある。
でも彼女のこういうところに、私はかつてたくさんの面で救われた。
「で、どーいうことよ??ワケがわからんて」
「えっ、と…?」
「なんで?なんで三好 奈都のメアド持ってんの!!」
やっぱり見ちゃったらしいのだ。
誰もいない、校舎内でも少し離れた家庭科室付近の女子トイレにて。
「ええっと、その……お、お友達に、」
「はあ!?えっ、三好 奈都だよ!?」
「ともちゃん、知ってるの…?」
「知ってるも何も!!えっ、逆に知らないの……?」
恐怖に怯えた目に似たもので見つめられ、「え?」と、返す。
すると大きなため息がひとつ。
「……確かにあんたって流行りとかに乗り遅れるタイプだもんね桜乃」
「う、うん…」