これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あ、でも好きな女の子のタイプくらいは聞けたら私に教えて?
ふはは、そーいう情報はいざってときに使えんだよなあ」
ともちゃん、言語だけじゃなく表情までも素が出てる……。
あぶないよ今の顔は…。
良からぬことを企む悪代官様だ。
それから数日後の休み時間のことだった。
こういう関係になってから三好くんに呼び出されたのは、初めて。
「どう?わりと周りは怪しんできた?」
「う、うん…」
「俺のとこも。こうやってじわじわ攻めて、向こうに勘づかせる。ってのが作戦」
お呼ばれされた場所は、生徒たちが好んで通らない、普段は空き教室扱いの多目的室。
ここは太陽も当たらなくて暗ったるく、じめじめしている。
「なに。今さら怖じ気づいた?」
「…ううん。そんなことないよ」
「てかさ、遠い。もっとこっち来なよ。…恋人なんだし」
どうして同じ立場にいるはずなのに、私が悪いことをして呼び出されたかのような緊張感があるんだろう…。
なんというか三好くんには、そういう目に見えない威圧というかオーラがある。