これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




命令されたら動かなければいけない、と感じさせる空気とは裏腹に。

なぜか身体は硬直してしまって1歩も踏み出すことができそうになかった。


───と、待ちきれなくなったのか、腰をあげて近づいてくる三好くん。



「わ、」


「ふっ、センパイのくせにピュアなの?それじゃいろいろ困んだけど」


「…ご、めん…」



ずんずん近づかれて、目の前に立たれて、わずかな隙間。

この距離感だったらいっそのことゼロになるまで縮めてもらったほうがマシ。


そう思わせてくるのも、三好 奈都という男の子の底知れぬ何か。



「あいつにはしてもらってないの?こーいうこと」


「あ…、っ、」


「おっと」



腰がくいっと軽く引き寄せられただけ。

たったそれだけで、全身が骨抜きされてしまったように力が入らなくなる。



「ちょっと待って。まじでちから抜けてんじゃん」


「ど、どうしてっ」


「それは俺のセリフ」



と呆れたように笑いながらも、しっかり支えてくれる。



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