これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「大丈夫?場合によっちゃあ、キスとかするだろうけど」
「えっ…」
「もしかして覚悟してなかった、とか。なわけないだろ?俺は利用させてもらうって言ったからね」
でもここ、誰も人がいないよ…?
私たちは“やましい”関係だから、あえて誰かが遠目から見えるようなところでしないといけないのに。
ドアも閉めてしまって、窓の外だって校舎の裏側だから倉庫があるくらいだ。
「寂しいとき、誰かの温もりが欲しくなったとき。そーいうときも利用しあえる関係ってことでも利害の一致はしたつもりだよ俺は」
違った?
───かすれぎみの声は、猛毒だ。
今までそれでどのくらいの女の子を虜にしてきたんだろうって、この子がいちばん危ないような気もしてきた。
「だってそれが浮気だろ?」
「っ…」
浮気。
はっきり言葉にされてしまうと、胸にズシリと錘(おもり)となって降りかかる。
私は浮気をされてしまったんだ。
信じていた彼も、こんなふうにあの女の子とくっついて、言葉を交わして、それ以上も。