これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
浮気される要素が、わからない。
この人を差し置いて勝吾くんが上に立つ要素が、まったくと言っていいほど。
だから三好くんの彼女───高田さんは、すごく勿体ないことをしている。
「それ、俺が谷 勝吾に同じこと思わせたら勝ちだよね」
「ひゃ…う」
「…こーいうのもしてくれなかったんだ」
すごく、イケナイコトをしている。
それだけは分かってしまう。
「わ、私は…お金として使われてただけでっ」
「…いちばん最悪だろそれ」
抱きしめてくれる腕の力が、少し、ほんのちょっとだけ温かくなったような気がした。
「ってことは、バイトもそいつのためにやってるだけ?」
「…うん」
「うわ、やば。ならこれからは自分の好きな服とかメイク道具とかさ、そーいうの買うためにやりなよ」
「で、でも…」
「拒否権とかない。そもそも聞いてもない。ちょっとイタイこと言うと、これが俗に言う彼氏命令ってやつ」
ポンポンと、背中を優しく叩かれる。
たったそれだけで目尻にはじわっと浮かぶから、「ナキムシ」なんて言われてしまった。