これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「冗談が通じない」
「え…っ?」
「騙されやすい、尽くしまくって損して終わる、空回り常習犯。えーっとあとは」
「まっ、まって…!当たってます!ぜんぶ当たってるから…!」
そしてすぐに「う、あ、」と、間抜けすぎる声が出てしまったのは。
「いーから聞けって」
そう囁かれたアルトが、想像を絶する以上のものだったから。
「馬鹿みたいに優しくて、わりと…がんばり屋さん」
どうするの。
これ以上泣かせてどうするの。
せっかくちょっとだけ泣き止んだのに、また振り出しに戻った。
「わかってるの、こんなのだからダメってことは…わかってる、」
「俺はそうとは思わない」
「え…?」
「ダメなのは、その優しさを自分だけのために使って無下にする…ゴミクズ野郎でしょ。
ああ、ゴミクズ野郎ってのは谷 勝吾のことね」
さすがに笑ってしまった。
ここまで包み隠さず言われると、どこかスッキリもする。
「一緒に落としてやろーよ。地獄に」
「…うん」
私たちが計画した、この逆転劇。
あんなにも胸が張り裂けそうな出来事がなかったら、こうして関わることはなかった。