これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
ニヤニヤ、つんつん。
どうしてそんな顔をして、そんなことしてくるの…ともちゃん。
「男子もダンス発表があったら、ぜったい安定の三好フェイスで優勝できるのに!!」
「あ、あんていのみよしふぇいす…?」
「さっきすれ違ったんだけどさ…。なにもう、世界が違ったよね。あれは無理だわ……。世の中の男たちに同情する」
深いため息を吐いたともちゃん。
私、たぶん、やっぱり。
周りのみんなより感性が遠いというか、鈍いというか、疎いというか。
三好くんが近くにいたら確かにドキドキするけれど、みんなのような気持ちが逆に分からない。
だってそうじゃなく、三好くんには“格好いい”よりも“優しい”のほうが強い気がしたから。
前の、多目的室で。
「友達になったんならさ、比べてみるのもアリだと思うよ私は」
「え?だれ、と…?」
「三好 奈都と谷 勝吾を。そこまでしないと桜乃は分かりそうにないもん」
背後からこっそりと、盛り上がるクラスメイトたちには気にもされない音量で囁かれた。
「私の気持ちは変わってないからね」