これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「そこで進路変更。右に曲がって突き当たり」
「へっ、わわっ!」
「そのまま視聴覚室に入って」
なぜか、気づけば、保健室ではなく、命令されたとおり視聴覚室へと進路変更されてしまっていた。
これからダンス発表ということもあり、生徒たちも校内には居なく、どの教室も今はほとんどが空き教室となっている。
まさかまさかの再び三好くんの登場だった。
「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
「あ、あの…」
視聴覚室の椅子に座らせられると、三好くんは私の声を聞かずに出ていってしまう。
そして本当にすぐ戻ってきた彼の手には湿布と包帯。
「捻っただろ、さっき」
「き、気づいてたの…?」
「なんかひとりだけボール追いかけてるだけの人いたから。逆に目立ってたし」
それは私だ。
それが私なんだ。
普段の授業でもいつもあんな感じで、パスされることは滅多にない。
それはしたところで加点にならないことをクラスメイトたちも知っているから。
「ダンス…、見に行かなくていいの…?」
「いーから動かないで」
丁寧に手当てをしてくれる。
椅子に座った私へとひざまずくように、私の足首に触れてくれて。
あ…、ジャージ姿に戻ってる…。