これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
「あ、俺はね。俺にとっての愛は、そんな感じ」
許せなかった。
私を裏切った勝吾くんじゃなく、この人を裏切った高田 セレナという女の子のことが。
どうしてそんなことができたの。
こんなにも深くて、温かい愛情を持った男の子なのに。
「わ、私も……それが愛だと、思う」
きれいな手をしている。
傷ひとつなく、爪の形も指の太さも、ほどよく骨ばった男の子らしさも。
なのに繊細で、それはガラス細工みたいな。
「ありがとう三好くん。…もう勝吾くんには、渡さない。それは三好くんにあげる」
渡さない。
もう、こんなのやめる。
ともちゃんの気持ちも背負っている私は、強くなるために言い切った。
「みよし、くん…?」
そんな私を見つめて、彼が顔を近づけようとした───とき。
ガチャ、と。
屋上の扉が開く。
「ナツく~ん、もー、探したよお」
「…セレナ」
完全にドアが開く前に察した三好くんは立ち上がって私を通りすぎ、彼女のもとへ。
けれどその動きもピタリと、止まった。
「あ、もしかして谷先輩の彼女さんじゃないですかあ?」
「……桜乃、こんなとこに居たのかよ」
ど、う、し、て。
な、ぜ、こ、う、な、る、の。