これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
勝吾くんごめんね。
渡そうと思ってたゲームソフト、もう今の私は持っていないよ。
ねえ勝吾くん。
それでも、それでも。
それでも私と仲良くしてくれる…?
「───…っ!」
そんなときだった。
すれ違った瞬間、なぜか私の空いていた左手が違う温もりによって掴まれる。
すごい。
たったそれだけで嫌悪感が消えちゃうだなんて。
「えっ、ナツくん…?なにしてるの?」
高田さんの声に応えることなく、彼は私の左手を掴みながらうつむいた顔を覗き込んでくる。
この地獄絵図でこんなことができるなんて。
さすがは三好 奈都だと。
「具合、悪いですか?なんかすごい…、なんだろ、ゴミクズ彼氏に浮気されたけど知らないふりして隠そうと頑張ってる女の子ってくらい辛そうな顔、してますよ」
どういうつもりだ、三好くん。
「…そ、んなこと…ない、よ」
「俺、実はずっと一ノ瀬センパイとも仲良くなりたかったんで。よかったら4人で映画でもどうですか?」
だ、れ。
声のトーン、胡散臭すぎる爽やかな笑顔。
とてつもない演技派俳優さん、こんにちは。
ただこれは、きっと、セリフそのものも三好くんの策略なんだ。