これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




でもまさかの、そんな地獄のダブルデートを君が決定させてしまうだなんて。



「ナツくんはポップコーンは塩だよね?」


「…いつもキャラメルだったでしょ、セレナ」


「いーの!今日はナツくんに合わせたいの」



歩くだけで目を惹くカップルは彼らだけなんじゃないか。

ポップコーンを選ぶだけで、他愛ない会話を繰り広げるだけで、まるでドラマの撮影でもしているかのよう。


お似合いすぎる……。
なつセレカップル、恐るべし。


対する私と勝吾くんといえば、飲み物だけをサッと購入して上映時間まで待合室で待機していた。



「地味に映画館って初めてだよな」



こんなに話せなくなるものなんだって、驚いた。

少しの間隔を空けて隣に座っている勝吾くんはそもそも私に聞いてきたのか、そうじゃないのか、まずはそこから。



「俺たちってわりと現実思考?だからさ。映画なんて大きなテレビなだけじゃん、みたいな」


「…うん。そう言ってたね」


「ははっ、俺は今もそう思うわ」



それは遠回しに“俺は変わってない”と言っているのだろうか。



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