これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
鼓膜が破れるんじゃないかと思った。
どこで息継ぎしているんだろうと思った。
スマートフォンから風がぶわわっと吹いてくると思ったら、どうやら窓が少し開いていたみたいだ。
そっと立ち上がって閉めに向かったとき、窓ガラスに映った自分の顔───泣きそうだ。
「さ、さっさと別れちまえって…、それはひどいよともちゃん」
『ひどいのはあいつ!勝吾でしょ!それに、馬鹿みたいに毎回毎回ゲーム買ってやる桜乃にも腹立ってきた!
あんた幸せになれる壺とか買うタイプでしょ?やだー、きら~い』
「ば、馬鹿って…、壷も買ったことないよ?え、ともちゃん、こんな私のこと嫌い…?」
『冗談だっての。比喩よ比喩!騙されやすいから心配だって言ってんの!』
ぼすんっと、ベッドに身体を預ける。
冗談が通じない、騙されやすい。
それはともちゃんだけじゃなく、今まで出会うひと出会うひとに言われつづけてきたセリフだ。
『とにかく!週明け聞くから!あまり考えすぎちゃダメよ?』