乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「う〜ん」

夏希は、頭を抱えていた。

それは、補習の問題が難しいからではなく、

その逆だった。

すらすら解けるのだ。

いつも、テストの問題は解けないけど…他は解ける。

やまが外れてるのだ。

そんな自分が、情けないのだ。

「〜は、こうやれば…」

黒板に、要点をまとめている哲也は、チョークを置くと、

「これを書き終わったら、今日は帰っていいいです」

夏希に顔を向けた。

「……」

夏希は目を細目ながら、黒板に書かれた文字を、必死にノートに写していた。

そんな様子を優しく見守る哲也は、突然扉を叩く音に気付いた。

「うん?」

哲也はそれに気付き、扉に近づくと、ゆっくりと開けた。

「はい?」

その瞬間、哲也は顔にスプレーで、何かをかけられた。
それは、催眠ガスだった。その場で崩れ落ちた哲也は、素早く廊下へと出され、扉は一度閉まった。


そんな一連の出来事も、夏希は気付かなかった。

最近、視力が落ちてきたのか…黒板の字が見えなくなってきた夏希は、必死に目を細め、文字と格闘していたからだ。

だったら、一番前に座ればいいのだけど、

それは、夏希のプライドが許さなかった。

(でも、見にくいのもねえ)

だんだんと疲れて来た夏希は、あることを思い出した。

(そうだ!さっき、変なおっさんに会って…天井から、眼鏡ケースがあ!)

夏希は鞄に手を伸ばし、眼鏡ケースに手を伸ばした。

度が合っていないかもしれないけど、物は試し! 

夏希は、眼鏡をかけてみることにした。
< 16 / 93 >

この作品をシェア

pagetop