乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「調子に乗るなよ!変身できない女子高生ごときに、我が負けるか」

バーコードはカツラを九鬼に向かって投げた。

「フン」

九鬼は軽く避けた。

しかし、その行動は誘いだった。

「くらえ!」

バーコードは頭を突きだした。

禿げた頭が、太陽の光を反射して、眩しいくらいに輝いた。

あたしは、あまりの眩しさに視界が真っ白になった。

「死ね!」

にやにや笑いながら、九鬼の足を取ろうと、バーコードは腰を屈め、タックルの体勢になった。

「え?」

バーコードは驚いた。

目の前に、九鬼がいない。

「お前達の行動など、予想できる」

九鬼は目をつぶりながら、ジャンプしていた。

そして、膝を曲げると、腰を屈めたばかりのバーコードの背中に落下した。

「ぐぎゃあ!」

背中が変な感じに曲がったバーコードから離れると、

九鬼は回し蹴りをバーコードの顎にヒットさせた。

「馬鹿な…つ、強い…」

バーコードは一瞬、意識を失った。


その一連の動きに、あたしは唖然としていた。

明らかに強い。

変身していないのに強い。

九鬼は倒れているバーコードに、腕を組みながら、近づくと蹴り起こした。


「!」

はっとして、意識が戻ったバーコードは慌てて立ち上がった。

「馬鹿な…馬鹿な…違う…違う!私は負けてない」

バーコードは明らかに、怯えていた。

それも九鬼を見てではない。

九鬼は訝しげに、眉を寄せた。

「わ、わたしは…嫌だあああ!」

屋上から逃げ出そうとするバーコードは、突然体を痙攣させると、動きを止めた。

すると、空から黒い物体が落ちて来て…バーコードの頭から覆い被さった。

「わたしは…なりたいたくない…下っぱに」

その声も虚しく、バーコードは全身を黒タイツに包まれた。

「キイイ!」

怪しい奇声を発しだしたバーコード。

それに、呼応したかのように、屋上の金網をよじ登って、他の黒タイツ達が現れた。
< 32 / 93 >

この作品をシェア

pagetop