乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「その程度か…。弱くなったな」

魔莉那の体が、揺らめく。

「偽りの鎧を身に纏い…弱くなった貴様に、倒されたとはな。まあよい」

しかし、魔莉那はにやりと笑った。

「今の貴様ならば…我らの悲願は達成される」

「そんなことはない!今のあたしは、独りではない!」

乙女ブラックの叫びを、魔莉那はせせら笑った。

「あんな…弱き者達が何人いようと…。それに…」

何かを思い出したように、魔莉那はにやりと口許を大きく歪めた。

「く!」

九鬼は再びジャンプした。

「月影キック!」

蹴りが決まる瞬間、魔莉那から満里奈に変わった。

「元気で…生徒会長」

「!?」

九鬼の蹴りが決まる寸前で、満里奈の姿は霧のようにかき消えた。

「馬鹿な」

床に着地した九鬼は眼鏡を外すと、周囲を確認した。

「幻!?いや…違う。や、やはり…封印が解けたのか?」

九鬼は唇を噛み締めると、その場から走り出した。

(一年前…。あたしは、やつらに遭遇し、大切な人と大切な仲間を失った。しかし!)

九鬼の脳裏に、自らの前に立ちはだかる三人の屈強な影と…その向こうで、玉座に座る巨大な闇が、甦る。

(何とか…あたしは、守り抜いたはずだ)

九鬼は、屋上から校舎内の階段をかけ下りた。






「失礼します」

九鬼が闇と接触している刻と同じ頃、もう1人の黒の宿命を背負う者が学園内に足を踏み入れていた。

「お久しぶりですね。お婆様」

「蘭花…」

学園内でも目立たない場所にある…理事長室。そこに姿を見せたのは…月影通信でお馴染みのあの方。

「お元気でしたか?」

大月学園の制服を着た黒谷蘭花は、一礼した後、理事長である祖母に微笑んだ。
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