ジョーになりたかった男(懺悔)

慢心

大場選手!大場直樹選手!1階リングまで来て下さい
マイクの呼び出しが地下に響いた。

相手の選手が来たんだな。どんな選手だろ?
楽しみでもあるが、果たして自分の練習相手が勤まるのか?

今の直樹は自信過剰気味なところがあった。

1階の練習場では見た事のない歳は20代後半の選手がリングでシャドーボクシングをしていた。

直樹。彼が今日お前のスパーリングパートナーの相手だ
挨拶してこい
糸山に促されて直樹はリングに近づくと自分から手を差し伸べながら

大場直樹です。今日は宜しくお願いします

○○ジムの加藤です。宜しく!
加藤は握手をすると、すぐに踵を返しシャドーを始めた。

直樹。加藤選手は大学時代にアマチュアで60戦の経験があるそうだ
アマチュアのテクニックをスパーで経験するのも勉強だ
会長が直樹に小声で呟く。

はい

そろそろ身体が暖まったんでスパーをお願いします
加藤が直樹に声をかける。

はい。僕はもう準備出来てますのでいつでもいいです


ワセリンを顔に塗りグローブをはめていると硝子越しに大勢の通り客がみていた。
直樹のジムは硝子越しにリングが見えるようになっている。

いつも夕方になると大勢のファンが見学に来ていた。

カーン!
ジム内にゴングが鳴り響く

お願いします
直樹と加藤はリング中央で両グローブを合わせ挨拶をすると
フットワークで距離を取った。

いきなり加藤が右のオーバーハンドで探りを入れる。

直樹はスウェーバックで避けながら逆に左ジャブをフリッカー気味に返す。

ビシッ!

加藤に驚愕の表情が浮かんだ。

今日はいつになくパンチが切れてる。

直樹はワンツーで右ストレートを当てる。

グシャ!!
加藤の身体が前にふらつく
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