ジョーになりたかった男(懺悔)
見学していた練習生がタオルで加藤のグローブを拭いて再開した。

ふんっ!
ふんっ!

加藤は大振りのパンチを振り回す。

直樹はスウェーとダッキングでパンチを避けながら冷静に考えていた。振りが大きいのは俺のパンチが怖いんだな。

直樹がロープ際に追い込まれ、加藤が右のストーレートを打ってくる。
そのパンチを肩越しにさけながら右のストレートをカウンターで決まった。

ゴォンッ!!
鈍い音が耳に残る。終わった。倒れる。

しかし加藤はふらつきながらも立っていた。

馬鹿な?完璧に決まったのに?

この野郎!
直樹が右ストレートを振り回したのと同時に
ストップ!!!
ストップ!!!
ジム内に会長、トレーナーの声が鳴り響く

ゴツンッ!!
直樹のパンチを受けた加藤は前のめりに倒れこんだ。

ストップ!!!
ストップ!!!
トレーナーがリング内へ入りながら叫んでいた。


直樹はコーナーに戻りながら足下の加藤を振返ると、加藤は痙攣しながら
倒れている。

頭を動かすなっ!!
静かにヘッドギアーを外してくれ!
マウスピースを外せっ!!
救急車を呼べ!!

ジム内が騒然となる。


直樹はなにが起きたのか。判らぬままボー然と立ち尽くすしかなかった。
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