ジョーになりたかった男(懺悔)
糸山はそんな直樹を慰めようと言葉を掛ける
これが格闘技の世界なんだ
お前の生きようとしている世界は命を獲るか?獲られるか?ジャングルなんだよ

糸山は感じていた。直樹は今、格闘技の世界に恐怖を感じている。自分の拳が例えスパーリング中とはいえ、 人を傷つけてしまったことに対する怯え。

病院に到着すると集中治療室の前で若い女性と3歳位の女の子と50代の女性が長椅子に座っている。
若い女性は加藤の妻らしかった。


糸山と会長は静かに近づくと頭を下げながら
この度は大変なことになり申し訳ございませんでした
直樹はその横でただ頭を下げるしか出来ない。言葉がでてこない。

50代の女性が静かに口を開いた。
加藤の母です。
私はボクシングを反対してたんです
結婚して子供も出来たんだから嫁と子供の為に普通の生活をしなさいって....

だけど、あの子は悔いを残したくないって....

そう言うと声を詰まらせて、咽び泣いた。
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