ジョーになりたかった男(懺悔)
すみませんでした
直樹は声を詰まらせて、必死に嗚咽をこらえながら絞りだすように一言が精一杯だった。

加藤の母は直樹の背中を擦りながら
あなたが悪いわけじゃないのよ
練習中の事故だもの。気持ちをしっかりもってがんばるのよ

直樹は頷くしかできない。

加藤の妻らしき女性に向かって直樹は頭を下げると、女の子が下から直樹の顔を覗きこみ不思議そうな顔をしながら無邪気に聞いてきた。

お兄ちゃんなんで泣いてるの?

その言葉に今まで必死に抑えていた涙が関をきって溢れ出す。
涙が頬を伝い雫となり幾つも落ちて直樹の服を濡らす。

ごめんね
ごめんね
ごめんね
ごめんね

ただ、嗚咽とともに絞りだす呪文のように繰り返す言葉しかなかった。
< 19 / 38 >

この作品をシェア

pagetop