ジョーになりたかった男(懺悔)
プロ根性
新人王予選を棄権してから1ヶ月半後、和田のOPBF東洋太平洋タイトルマッチ挑戦がインドネシアで行われ7回KO負けを喫したのを知ったのはTV放映のあった翌日だった。

先輩が負けた....

自分はボクシングから離れたいという気持ちだったが、どうしても気になる。
忘れたい
離れたい
思えば思う程ボクサーの血が騒ぐのを感じていた。

減量する必要もないのに
殴られて痛い思いもしないで済むのに
友人と毎晩のように飲み歩いても心の枯渇は増すばかり

先輩を激励にジムに行ってみようかな.....

数日後、直樹は気まずさも忘れジムへ顔を出した。

よう!直樹!
マネジャーの糸山もそんな直樹の気持ちを察してか、以前と変わらず言葉を掛けてくる。
1ヶ月ちょっとジムへ来なかっただけなのに見た事もない練習生が大勢いる。
ジムの練習生は150人を悠に越しているマンモスジムだ。

もう。俺の居場所なんて無いのかもしれない...
一抹の寂しさを感じつつも表情には安堵感も漂っていた。

和田先輩は?
糸山に聞きながらジム内を見回し和田の姿を探す。

ああ和田は病院寄ってから来るそうだ

どこか?怪我でもしたんですか?

う〜ん...この間の試合でサミングされたみたいで
目をな...
糸山は周りを気にしながら言いにくそうに小声でつぶやく

直樹は糸山の態度で和田の怪我が思いのほか重症なのだと思った。
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