ジョーになりたかった男(懺悔)
再起
和田の最後の試合を見届けた直樹はリングへの思いを捨て切れず、再起への道を選ぶ。

和田も目の手術をし、今回は幸い失明には至らず視力は落ちるものの日常の生活には支障を来さない程度には回復するようだった。

直樹は再起するにあたり、入院でリハビリ中の加藤に挨拶に行った。

恥を忍んでの再起を決めました。もう一度リングに上がらせてください
直樹は加藤に頭を下げる。

加藤は麻痺した下半身を器用にくねらせながら直樹に近づくと直樹の手を握りしめ
きみぃはぁおれぇの代わりにリングに上がりゅんんだぁ
おれぇのゆめぇ(夢)をきみぃにたくすぅ(托す)
呂律の廻らない口調でしっかりと直樹の目を見つめるその目は格闘家の目だった。

はい
きっと、必ず....
見つめ返す直樹の目も格闘家の目に戻っていく


加藤の夢半ばで砕いてしまったという慚愧の念から以前にも増して練習に励んだ。一度は未練などないと決めたはずが....リングに残した何かを求めて再起。



練習再開から2週間後、初スパーリングに挑む。

そこで直樹が更なる地獄を味わうことになろうとはジム関係者をはじめ誰しも想像だにしなかった。

もちろん本人も.....
< 31 / 38 >

この作品をシェア

pagetop