ジョーになりたかった男(懺悔)

己との闘い

まだ夜も明け切らぬ早朝5時から直樹の1日が始まる。

ロードワークの時間だ。

ボクサーの一日は走ることから始まる。走る事によって耐久力とスタミナそして打たれ強さを強化することが出来る。強靭な足腰の強さこそが殴られたときによる脳が揺れるダメージ、いわゆる脳震盪に耐えられるのである。

試合まで、あと1週間と迫っていた。

直樹は顔を洗い歯を磨き、トレーニングウェアに着替えるまえに体重計に乗り確認し、ノートに59kgと記入した。

身長175cmで体重が59kg

今度の契約ウェイトがフェザー級リミットが57.15kg

減量もあと2Kg落とさなければならないが、減量に関しては心配していなかった。ジムで2時間練習すれば1〜2Kg位簡単に落ちる。



夕方....



学校が終わりジムへ行くとマネージャーの糸山に呼び止められた。

直樹。北海道へは前日に飛行機で行くからな

前日ですか?別にどうでもいいですけど ぼそぼそと応える

ああ。朝の7時にジムに集合だ。みんなで行く

和田先輩は?

アホ。和田は王者だぞ。3日前に現地入りだ
あと、これが向こうの宿泊ホテルの連絡先だからお前の親父さんに渡しといてくれ

直樹は気怠そうにメモを受け取り地下へおりていくとロッカールームではすでに何人かの選手が着替えていた。

たっくよぉ〜冗談じゃねえよなぁ
前日現地入りだとよぉ
宿泊費用をケチろうってんだろ

話をしていたのは今度の出場選手たちだった。選手の一人、4歳年上の伊藤が直樹に気が付き

おお〜直樹か。お前デビュー戦だろ?緊張してるか?

べつに...まだ何ともないかな... 澄まし顔で直樹は言った

お前らしいな
伊藤は笑うと、さっさと着替えてロッカールームから出ていった。

直樹はなんともないと答えたが、嘘をついた。怖くて怖くて...なにが怖いのか自分でも判らない。
まだ見ぬ相手の選手?殴られる恐怖?


恐怖感を拭いたい一心から練習に打ち込んだ。


直樹は
ボクサーには相手と戦う前に

減量....ロードワーク...練習...そしてまだ見ぬ道の世界への恐怖....

己との戦いに勝たなくては先に進めないことを知る。 試合まであと一週間....
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