神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…古代文字の小テスト終了後。

「はー、難しかったー…。全然分かんなかったよー」

と、シファちゃんは机に突っ伏して言った。

そっか。シファちゃんも分かんなかったんだ。

私も全然分かんなくて、って言うか自分の名前もよく分からなかったから、ひとまず名前欄にベリーシュ、とだけ書いて提出したけど。

あれって、もしかしなくても0点なのでは?

ま、いっか。

「6割…いや、半分取れてたら良いなぁ」

シファちゃん。それは「全然出来なかった」とは言わないよ。

だって、半分は分かったんでしょ?

私は一問も分からなかったから、そういうのを「全然出来なかった」と言うのだ。

私に古代文字は読めない。

少なくとも、得意科目ではないかな。

私の得意科目と言ったら、もっと別の…。

…別の…何だっけ?

私、何か…得意な科目ってあったかな…。

「…次は、何の授業だっけ?」

「次?えぇと…地理だね」

…ちり?

ちりってなんだろう…。ゴミのこと?

ゴミのお勉強するの…?分別の方法とか?

それは大事なお勉強だね。

「その次の授業は?」

「?どうしたの、いきなり…。地理の次は英語だよ」

…えいご?

…えいごって何だろう…。

あ、聞き間違い?敬語?敬語の授業?

それはありそう。敬語のお勉強も大事だよ。私、全然使えないし。敬語。

「その次は?」

「四時間目は…私に聞かなくても、掲示版の時間割表に書いてあるじゃん。倫理だよ」

りんり…。…倫理?その名前の科目なら、私も聞いたことがある。

これも確か、とっても大事なお勉強なんだよ。

「…魔導倫理?」

「は?何だって?何倫理?」

え?だから、まど…。

…何だっけ?

自分が今しがた言おうとしたことさえ、頭の中から消えてしまった。

…私もしかして、記憶喪失のみならず、ボケが始まってる…?

…何だか危険な香り。
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