神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
着替えが終わったら、体育の授業の準備をした。

何の準備かと言うと、体育館倉庫の中から、今日使う道具を出しておくんだって。

成程、分かるよ。

稽古場で、魔導人形を準備するようなものだね。

…ん?魔導人形…?

一体何をする人形なんだ…。

しかし、きょろきょろと見渡してみても、この倉庫の中に人形はなく。

代わりにシファちゃんは、ネットや、白っぽいボールを運び出していた。

…。

「これは何をする道具なの?」

「何って…バレーボールでしょ?」

何を当たり前のことを、と言わんばかりのシファちゃん。

バレーボール…。

聞いたことはあるけど…何をするスポーツなんだろう?

バレー…。…バレエ?

そうだ、私、バレエなら知ってる。

確か、前やろうとしたことがあったはずだよ。…いつだったかは忘れたけど。

足を上げて、難しいポーズを取る踊りだよ。

あれをやるのかな。授業の一環で。楽しそうだ。

でも、何でバレエにボールが必要なんだろう…?

踊りながら、ボールを投げ合うんだろうか。

何だか、凄く難しそう。

私に出来るかなぁ…と、心配していたら。

いざ始まったバレーボールは、私の予想とは全然違っていた。

足を上げて手を上げて、難しいポーズを取るのかと思っていたら、全然そんなことはなく。

ネットを挟んで、6人ずつのチームに分かれ。

白いボールをぽんぽん投げ合っていた。

…これが、バレーボール…?

何を競ってるのか、よく分からないスポーツだ。

ルール…。ルールが分からないよ。

何をして良いのか分からなくて、ぽやんと突っ立っていたら。

私の目の前に、ぽん、とボールが落ちてきて。

一歩も動かずにいたら、チームメイトに怒られた。

「ちゃんと取ってよ」って。

だから、次にボールが落ちてきたとき、ちゃんと落とさないようキャッチしたのに。

それでも怒られた。

「ちゃんと打ち返してよ」って。

だから、次にボールが回ってきたとき、手のひらでパチン、と叩いて撃ち落としたら。

やっぱり怒られた。

「真面目にやってよ」って。

私は真面目なはずなのに…。どうしてそう言われるのか分からない。

このバレーボールというのは、ルールが難しいんだね。

皆がプレイしているのを見ても、ルールがよく分からないや。

結局私のいるチームは、見事に全敗。

チームメイトは、うんざりした顔でこちらを見ていた。

だって、分からないんだからしょうがないじゃん。

何だか、居心地が悪いなぁ…。
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