神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ママに見せた後、パパが見ると。

ひょえってなってたママとは違って、パパは大笑いだった。

テストだけで人を笑わせられるなんて、むしろ凄いことだと思う。

しかし。

「あのね、パパ。笑い事じゃないのよ?」

ママは、ジトーっとパパを睨んだ。

「いや、すまん。でも、見事だなと思って。いっそあっぱれじゃないか?」

「そんなこと言って、すぐベリーシュを甘やかすんだから…。たまにはガツンと言って頂戴」

ガツン。

「あのね、学校はともかく…。勿論学校も頑張らなきゃいけないけど、塾だって安くないのよ?真面目に勉強してもらわないと、塾代が無駄になっちゃうわ」

と、ママは愚痴った。

あのじゅくって、そんなにお金かかってたんだ。

私、古代文字研究家になるつもりはないから、じゅくやめても良いよ?

どんなに熱心に勉強したって、私には古代文字は読めないだろうし…。

記憶が戻る見込みも、今のところないし…。

これ以上お金を無駄にするくらいなら、いっそやめたい。

「たまには良いじゃないか。塾をサボった訳でもないし」

と、パパ。

「全部0点を取ってくるんじゃ、サボってるようなものじゃない」

と、ママ。

それは違うと思うけどなぁ。

ちゃんとテストを受けて、全部0点を取るのと。

そもそもテストも受けずに、結果全部0点になるのは、きっと違うよ。

点数は同じ0点だけど。

正々堂々立ち向かった結果の敗北と、敵前逃亡による敗北は意味が違うよ。

敗北には変わりないじゃないかと言われたら、それは言い返せないが。

「まぁ、そう怒ってやるな。たかだか試験の一つや二つで」

パパは、あくまでおおらかだった。

顔が半笑いだから、多分ちょっと面白がってる。

「全くもう…。そうやって娘に甘いんだから…。…分かったわ」

と、溜め息をつくママ。

「今回は見逃してあげるけど、その代わり、次は頑張るのよ。良い?」

「…うん…」

まるで、今回は頑張っていないかのような言い方。

ちゃんと頑張ったよ、私。

ただ…ちょっと記憶がなくなって困ってるってだけで…。

次の試験までに記憶が戻ったら、私もシファちゃんみたいに良い点数を取れるのかな?

…でも、私は…。

試験なんかより、もっと大切な事があった…ような。
< 160 / 634 >

この作品をシェア

pagetop