神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
Ⅶ〜中編〜
――――――…一方。

ルーデュニア聖王国、聖魔騎士団魔導部隊隊舎にて。

俺は今日も朝っぱらから、女性隊舎に足を運んでいた。

え?朝一番に女性隊舎に立ち入るなんて、マナー違反だろって?

俺もそう思ってるよ。

でも、仕方ないだろ。

だって起こしに行かないと、いつまでも寝てんだもん。

あいつ、もしかして起こされるの待ってんじゃね?

起こしてもらうこと前提で、毎日寝坊してるだろ。ルイーシュかよ。

朝から女性隊舎に足を運び、寝ている女の部屋に入るなんて、冗談じゃないと思ってたけど。

最近は考え方を改めることにした。

俺は、寝てる女の部屋に入ってんじゃねぇよ。

寝坊助の幼児を起こしに来てんの。それだけ。

女の寝室に…と言うと、何だか犯罪臭が漂うが。

幼児を起こしに来た、と言えば、途端に健全に聞こえるよな。

だから、そういうことにしてくれ。

最近は、女性隊舎の魔導師達とも顔見知りになり。

奴を起こしに来たと知っている女性魔導師達は、俺とすれ違う度に、「おはようございます」じゃなくて。

「お疲れ様です」と挨拶するようになった。

本当にお疲れだよ。

いい加減自分で起きろと、目覚まし時計をセットしろと、口を酸っぱくして言ってるのに。

「うん分かったー」とか言いながら、あいつ全然分かってないからな。

その翌日には、またボサボサの髪でぐーすか寝てるから。

幼児でも、もうちょっと学習能力があるわ。

任務のない日なら、別にいくら寝てても構わないんだが…。

今日は任務こそないものの…その代わり、今日は来客の予定がある。

誰かと言うと、シルナ・エインリーと、その相棒である羽久・グラスフィアの二人だ。

あの二人が今日、聖魔騎士団にやって来ることになっている。

例の、イーニシュフェルトの里時代の魔法道具…『オオカミと七匹の子ヤギ』について。

聖魔騎士団の面々にも、もっと詳しく状況を説明し、一緒に対策を考えたいとのことだった。

そんな申し出を受けて、断るシュニィではない。

聖魔騎士団魔導部隊は、シルナ・エインリー達と一蓮托生だ。

『サンクチュアリ』のとき、随分あいつらにも助けてもらったしな。

今度は、俺達があいつらを助ける番だろう。
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