神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「そもそも、何でそんな魔法道具が今になってこの世に現れたんだ?」

と、尋ねる聖魔騎士団団長、アトラス。

「それは…。里が滅ぶときに、これらの魔法道具は封印したはずなんだ。でも…先日の、賢者の石の封印が解かれた影響…だと思う」

前にも言ってたな。

あのときは『白雪姫と七人の小人』だけだったから、そういうもんかと思っていたが…。

…本当に、それだけなのか?

賢者の石の封印が解かれた…たったそれだけで。

イーニシュフェルトの里の連中が封印した魔法道具が、次々と出土してるって言うのか?

…どうも邪推してしまって、良くないな。

「ふむ…。ということは、もし『オオカミと七匹の子ヤギ』を片付けても、別の魔法道具が再び現れる可能性がありそうだな」

「そうだね…。ないとは言い切れないのが辛いところだよ…」

…計、何個あるのか知らないが。

その度に巻き込まれるのだろうか。何だか気が遠くなるな。

「ちなみに、ですが…。『オオカミと七匹の子ヤギ』は、何処から現れたんですか?確か前回の『白雪姫と七人の小人』は、学院の…畑、から掘り出されたんですよね?」

畑?

あの学校、畑あんのか?

…何の為の畑なんだ…?魔導学院なのに…。

「あぁ。うちの生徒が畑を耕してたら、見つけたらしい」

羽久・グラスフィアが答えた。

イーニシュフェルト魔導学院は、その名の通り、かつてイーニシュフェルトの里があった場所に建てられている。

だから、学院の敷地内に魔法道具が封じられているのは、おかしいことではない。

多分『オオカミと七匹の子ヤギ』とやらも、学院の敷地内の何処かから出土したんだろう。

しかし、お前んとこの生徒は、何をやってんだ?

魔導師になるんじゃないのか。何故畑…?

「今回の『オオカミと七匹の子ヤギ』も、畑から…?」

「さぁな。今回は、掘り出されるところを見た奴がいないから…。…ただ、うちの生徒が…すぐりが言うところだと、最近…畑の一部が荒らされてたそうだ」

すぐり…元『アメノミコト』の暗殺者か。

「畑が…。じゃあそれは、もしかして…そのときに『オオカミと七匹の子ヤギ』が…」

「どうだろうな…。さっきも言った通り、封印が解かれるところを、この目で見た訳じゃないから…。何とも言えないが…」

…もしかすれば、その荒らされてた畑の下に…埋まっていたのかもしれないな。

それを誰かが掘り出し、『オオカミと七匹の子ヤギ』を発動させた…。

厄介なことをしてくれた奴がいるもんだ。

知らずに行ったことなのか、それとも何らかの悪意を持っていたのか…。

学院の敷地内に魔法道具が存在していることを、誰かが知っていたのだろうか?

「…何処から魔法道具が出てきたのかは、ひとまず置いておいて…。まずは、その魔法道具を攻略することを考えるべきでは?」

無闇が言った。

…そうだな。

まだ消えた訳じゃないんだろう?『オオカミと七匹の子ヤギ』は。
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