神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ドッペルゲンガーが七体出てくる、だっけか。

「そうだね…。あと一体なんだよ。今のところ、六体のドッペルゲンガーを撃退したんだ」

六体…六体ねぇ。

「現れたドッペルゲンガーは、私と、天音君と、令月君とすぐり君。それから、イレースちゃんとナジュ君」

オールスター勢揃いじゃないか。

まぁ、あれだな。

一般生徒じゃなくて良かったな。大パニックが起きるところだったぞ。

「どのドッペルゲンガーも、本物に成り代わることを目的に、色々悪さをしてくれたけど…。それぞれがそれぞれの方法で撃退したよ」

「それは…大変でしたね」

「あはは…」

そんな、力無い笑いで誤魔化そうとするんじゃねぇ。

撃退したと簡単に言うが、大変だったことだろう。

気持ち悪かったろうな。自分のそっくりさんが目の前に現れて。

自分でも、自分が本物なのか疑いそうになるだろう。

で、そんなドッペルゲンガーを六体退治した…と。

「ってことは…残りは一体か」

「うん。今は、最後のドッペルゲンガーが現れるのを待ってるところだよ。あるいは…もう何処かに現れてるのかもしれないけど」

…ふーん…。

「順当に行けば…残るは、羽久さんですね」

これまでの六人のメンツから考えると、確かに。

残る一人が羽久のドッペルゲンガー…というのは充分考えられるな。

「だろ?…俺の格好をして、ろくでもないことをしてるんじゃないかと思うと…落ち着かないよ」

…そりゃご苦労様なことだな。

自分の偽物が、自分の知らないところで悪さをしてるなんて。

考えるだけで悪夢だな。

俺は、ちらりとベリクリーデの方を見た。

ベリクリーデは、会議室の椅子に座っているものの、会議に参加する意思はないようで。

もぞもぞと、髪の毛を弄っていた。

話聞いてんだろうか。あいつは。

発言しなくても良いから、会議は真面目に聞けよ。
< 166 / 634 >

この作品をシェア

pagetop