神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「『オオカミと七匹の子ヤギ』に限らず…。他にも、封印されていた魔法道具が、私達の前に現れるかもしれない…。そのとき、また聖魔騎士団の皆に手を貸してもらわないといけないかもしれない」

シルナが、申し訳無さそうに言った。

「出来るだけ、自分達で解決するつもりではいるんだけど…。また『白雪姫と七人の小人』のときみたいに…」

「大丈夫ですよ、学院長先生。心配しないでください」

努めて笑顔を作りながら、シュニィが言った。

…俺達に借りを作るんじゃないかと、もやもやしてるのかもしれないが。

何度も言うように、それはお互い様だからな。

既に充分巻き込まれてるんだから、今更遠慮する必要はない。

「ここにいる皆、同じ気持ちですよ。イーニシュフェルト魔導学院の方々の為に、役に立てることなら…協力は惜しみません」

「シュニィちゃん…」

感動的な場面…の、はずだったのだが。

「…俺は、正直働きたくないですけどねー」

「ルイーシュ…。お前は、ちょっと黙ってような…?」

…ちょっと、ルイーシュとキュレムのやり取りは、聞かなかったことにして。

「魔法道具、っていうのを退治すれば良いの?」

…ずっと黙っていたベリクリーデが、ひょこっと顔を上げて言った。

聞いてないように見えて、ちゃんと会議の概要くらいは聞いていたらしい。

「そうだね。ベリクリーデちゃん、頼めるかな」

「うん、分かったー」

軽いノリだな。

お隣さんに回覧板持っていってくれないかな、くらいのノリ。

「『オオカミと七匹の子ヤギ』…そして、他の魔法道具についても、警戒を強めましょう。何か怪しいものを見つけたら、すぐに報告してください」

シュニィが皆にそう言って、ひとまず、会議はそこで締め括られた。

…怪しいものを見つけたら、すぐに報告…か。

悪いな、シュニィ。

何かあれば皆に報告して、情報を共有し、聖魔騎士団魔導部隊の面々、全員で対処に当たる。

それが正しいやり方だってことは、重々承知の上だ。

だが…今回は。

俺は、俺のやり方でやらせてもらう。
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