神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…会議が終わり、シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアはイーニシュフェルト魔導学院に帰った。

俺達大隊長も、それぞれ持ち場に戻った。

…そして次に、俺が何をしたかと言うと。

真っ直ぐに、魔導部隊女性隊舎に向かった。

目指す先は、勿論…。

「いるか?ベリクリーデ」

「あ、ジュリスだ」

ベリクリーデの部屋に足を運んでみると。

…何故かベリクリーデは、柿に囲まれていた。

…嘘ではない。本当だ。

ベリクリーデの足元に、柿の実が無数に散らばっている。

…また今日は…一体何をやってるんだ?

会議が終わったばかりだというのに、真っ先にやることがそれなのか?

「丁度良かった、ジュリス。手伝ってー」

「…今日はまた、一体何をしたいんだ?」

「干し柿作るの」

あー、うーん。成程ね。

まぁ、そんな時期だもんな。

魔導隊舎の周りに、たくさん柿の木が植えてあるし。

どうせ誰も食べない渋柿なら、干し柿にして食べてあげる方が、無駄にならなくて済むもんな。

渋柿を眺めてたら、干し柿作りたくなるよな。分かる分かる。

…って、そんな訳があるか。

しかも、ベリクリーデの干し柿は。

「よいしょ、よいしょっと…」

「…」

干し柿と言えば、一つ一つ、ロープに繋いで干すのが一般的…な、はずだが。

ベリクリーデは、洗濯バサミがついたピンチハンガーに、柿を吊るしていた。

洗濯物かよ。

小学生の発想。

「これで一晩干したら、甘くなるんだよ。凄いね」

一夜干しかよ。

小学生以下だな。幼稚園児の発想。

「…あのな、干し柿って、そうやって作るんじゃないから」

「…ほぇ?」

ほぇ、じゃねぇんだよ。

何にでも興味を持つのは良いが、せめて正しい知識を持って行動してくれ。

「はぁ…仕方ない…」

折角収穫してきた柿の実を、無駄にするのも惜しいし。

干し柿くらいなら、それほど大変な作業という訳でもない。

「作ってやるから、ちょっと手伝え」

「ほんと?やったー。ありがとうジュリス」

どういたしまして。
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