神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
天音は、困惑した様子で学院長にやって来た。

…? 

「…どうしたんだ、天音?」

眉間に皺が寄ってるぞ。

「いや…その…実はさっ、」

「いらっしゃい天音君!ウェルカムフードにガトーショコラは如何?」

シルナがうるせぇ。

ウェルカムフードにガトーショコラって。

「ど、どうも…」

「いやいや、気にしないで!さぁ食べて!美味しいよ〜」

満面笑みのシルナに、天音は戸惑いながらガトーショコラの皿を受け取った。

天音が困惑していることに、全く気づいていないシルナである。

お前の頭は、いつも能天気で羨ましいよ。

すると、そこに。

「失礼します、学院長。本日の郵便物を…」

「ようこそ、いらっしゃいイレースちゃん!君もガトーショコラをどうぞ!」

「結構です」

さすが、一刀両断のイレースである。

郵便物をデスクの上に置いて、シルナを無視してさっさと立ち去ろう…と、したイレースだったが。

イレースはちらりと天音の方を見て、そして足を止めた。

…ん?

「天音さん、あなたが持っているその冊子…」

「え?」

「もしかして、さっき新聞部が配っていた号外ですか?」

…号外?

「あ、うん、そう。新聞部の部長さんに、半ば押し付けられちゃって…」

新聞部?

って言うと、あの愉快な三人組がいる部活じゃないか。

「廊下で喧しく大声をあげながら、新聞を配っているものだから…。一体何の号外なんですか?」

「イレースさんはもらわなかったの?」

「私は、先を急いでいたので」

号外だろうが何だろうが、急いでいるときに足を止めるイレースではないと。

さすがである。

その点、押し付けられちゃったら、嫌でももらってしまう天音は、やっぱりお人好したな。

…それにしても。

「珍しいな。新聞部が号外を配るとは」

新聞部の活動は、大抵いつも、定期的に新聞を発行しているだけなのだが。

号外ってことは、いつも定期的に発行している新聞とは別に書かれて、配布されているだろう?

一体、何について書いてるんだか。

「それが…」

と、言い淀む天音である。

…?

「まだ読んでないのか?」

「いや…それが、何だか奇妙なことが書いてあって…」

奇妙なこと?

って何だよ?

「イーニシュフェルト魔導学院の、幽霊騒ぎについて書いてあるんだ」

…何だと?
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