神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ここでも、幽霊騒ぎか…。

「ちょっとそれ、見せてくれるか?」

「あ、うん。どうぞ」

天音が、新聞部の号外を手渡してくれた。

イレースと共に、その号外を読み始める。

一番に目に入ってくるのは、太字で書かれた記事の見出し。

『イーニシュフェルト魔導学院に幽霊出没!?』の文字である。

何とも、人の心を煽る見出しである。

こんな見出しを見たら、「お!?ちょっと読んでみよう!」と思うよな。

さすが新聞部だよ。

魔導師じゃなくて、新聞社で働くのも良いかもしれない。

「何を馬鹿なことを…」

イレースはその見出しを見て、思いっきり眉間に皺を寄せていたが。

俺は、例の噂について気になっていたから、この新聞部の号外は助かった。

あの噂について、もっと詳しいことが書いてあるかもしれない。

「生徒の間で、今噂になってるだろ?学院の幽霊騒ぎ…」

「何です?それは」

イレースは知らないらしい。

まぁ、イレースにしてみれば、絶対有り得ない噂だからな。

噂を耳にしていたとしても、無視していたのだろう。

「もぐもぐ。ガトーショコラうまうま〜」

「おい馬鹿シルナ。お前も、この号外を読め!」

「ほぇ?」

口の中をガトーショコラでいっぱいにして、きょとんと首を傾げるシルナ。

どんだけ脳天気なんだ、お前は。

「生徒の間で噂になってるんだよ」

「えっ。やっぱり?確かに寒くなってくると、ホットチョコレートが美味しい時期に…」

チョコのことじゃねぇよ。

「学院に幽霊が出てるんだとよ」

「…へ!?」

ようやく、正気に戻ったらしい。

「な、何で?いつの間に!?」

「良いから、この号外を読め。新聞部が幽霊騒ぎについて特集してくれてる」

恐らく、俺達が知りたいことが、この号外に書かれているだろう。

「ちょ、ちょっと見せて!」

シルナが新聞に飛びついてきたので。

俺とイレースとシルナは、三人でその新聞を読んだ。
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