神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「うん?ジュリスじゃん」

「何ですか?俺今、超忙しいんですけど」

…忙しそうに、書類に向かってペンを動かしているのはキュレムだけで。

ルイーシュの方は、ソファに寝そべって、ゴロゴロしてるように見えたんだが。

これで忙しいらしい。成程。

恐らく、呼吸に忙しいんだろうな。

忙しく呼吸してるところ悪いが、ちょっと頼みたいことがある。

「…協力して欲しいことがあるんだ」

「へ?ジュリスが?そりゃ珍しい…。明日の天気は槍だな」

有り得る。

「それは…アレですか。キュレムさんに、協力して欲しいんですか?それとも俺達二人に…」

「お前達二人に協力して欲しい」

「…うげー…」

まぁ、ルイーシュはそんな反応をするだろうと思っていた。

それどころか。

「特に、ルイーシュ。お前の手助けが不可欠なんだ」

「うげぇぇ…。冗談でしょう?…キュレムさん、パス」

パスするなよ。

「あのなぁ、お前…。どうせやることないんだから、ちょっとくらい協力してやれよ。ジュリスが頼み事するなんて、超珍しいだろ」

「普段頼み事をしない人が、満を持して頼み事をするなんて…。絶対面倒臭いことに決まってるじゃないですか。あぁ憂鬱…」

…確かに、面倒な頼み事かもな。

だけど、俺一人では無理なんだ。

「…頼む」

俺はキュレムとルイーシュに頭を下げた。

面倒なことで申し訳ないが、しかし協力してもらわなければ。

俺は、ベリクリーデを助け出せない。

「…」

「…」

俺が頭を下げたからか、キュレムもルイーシュも、これはただごとではないと思ったのか。

無言で、じっとこちらを見つめ。

「…何をすれば良い?」

「気持ち悪いから、頭なんて下げないでください」

キュレムとルイーシュが、それぞれ言った。

気持ち悪くて恐縮だな。

「…ベリクリーデが断絶空間に閉じ込められた。助けに行くのに、お前達の力を貸してくれないか」

回りくどい説明は無しで、単刀直入にそう切り出した。

これには、二人共しばし言葉を失っていた。

…まぁ、そんな反応になるよな。
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