神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「はい、出来ましたよ」

「…悪いな。感謝する」

ルイーシュが、ここまでやってくれたのだから。

あとは…俺の仕事だ。

「あとは、俺がやる…。…お前達は見るな」

「はぁ?」

これ以上、二人を巻き込む訳にはいかなかった。

「責任を負わせたくない。あとは俺が一人でやるよ」

「…何言ってんだ、おめー」

キュレムが、うんざりしたような顔で言った。

「俺達を呼んだ時点で、とっくに巻き込まれてんだよ。今更責任を負わせたくないったって、既に責任背負わされてるんだけど?」

ぐっ…。

それを…言われると、痛い。

でも…ここまでならまだ引き返すことが…。

「あのな…でも、これ以上は…」

「毒食らわば何とやら、乗りかかった船って奴だ。最後まで付き合うよ」

…キュレム…。

その気持ちは、有り難いが…。

「お前がそんなことをする必要はない…。あとは俺が…」

「はっきり言わなきゃ分かりません?あなた一人に任せると死ぬから、手伝ってやろうって言ってるんですよ」

ルイーシュの舌鋒が突き刺さる。

…容赦ねぇな、お前。

本当、痛いところをついてくる…。

「…俺は、そんなに信用ならないか?」

「あなたが信用ならないんじゃなくて、断絶空間を畏れてるんです」

そうかよ。

「手伝わせないつもりなら、今すぐシュニィ達に言いつけるぞ」

挙げ句、脅しをかけてくる始末。

全く、俺はなんて頼もしい仲間に恵まれたことだ。

「…分かったよ。悪いが…手伝ってくれるか」

「おぉ、任せろ」

「はぁ。仕方ないですね…」

…まぁ、丁度良いかもしれない。

正直、俺一人じゃ…「アレ」を使っても、断絶空間を壊せるか不安だったから…。

三人がかりなら、何とかなるかもしれない。

「で、俺達は何したら良い訳?」

「断絶空間の入り口に…亀裂を入れてくれ。亀裂さえ入れば、そこから無理矢理抉じ開ける」

「…マジで強行突破だな」

断絶空間を抉じ開けるには、強行突破以外の手段はないからな。

必然的にそうなる。

「はいはい、分かったよ、了解…。全く、安請け合いした自分を責めるよ」

「…悪いな」

「全くですよ。時間外労働ですね」

悪態をついたキュレムとルイーシュは、それでも、次の瞬間には真剣な顔つきに変わっていた。

二人の纏う空気が変わったようだった。

「さて、やるか…ルイーシュ」

「えぇ、どうぞ」

キュレムの周囲に、八丁の拳銃が浮かび上がった。
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