神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…10分足らずで、新聞を読み終えた。

なんか…何て言うか。

びっくりだな、色々と。

「ほ、本当に出るのかな…?」

若干怯えたような顔で、天音はそう呟いた。

それは…俺も知りたいよ。

しかし。

「馬鹿なことを。流言飛語に踊らされた、生徒の戯言に決まってます」

イレースは、ばっさりと切り捨てた。

容赦ねぇ…。

俺もイレースほど簡単に、これは単なる噂に過ぎない、と割り切れたら良いんだけどな。

この号外を読んだら、「まさか、本当に…?」も思ってしまう。

俺は、流言飛語に踊らされるタイプなのかもしれない。

で、シルナはと言うと。

「…」

完全にびびりまくって、震えながら縮こまっている。

誰より恐れてるな。幽霊を。

七不思議の真偽を確かめたときも、シルナはびびりまくってたっけ。

肝が小さいんだよ。肝が。

「は、羽久が…わ、私に失礼なことを、考えてる気がするけど…。今は、それどころじゃない…」

そうか。

「こんなものはデマに決まってます。全く、イーニシュフェルト魔導学院の生徒ともあろう者が、こんな馬鹿げたデマに踊らされるとは…。情けないにも程があります」

「で、でも…。火のないところに煙は立たないって言うよ?」

「なら、天音さんは信じているのですか?この駄文が本当だと」

新聞部の号外を、駄文呼ばわり。

「そ、それは…。見たことがないから、僕にも分からないけど…」

だよな。

俺も、見たことがないから分からない。

「でも…。ここには、実際に見たっていう生徒の言葉が載ってるし…」

そう。

この新聞には、実際に「見た」という生徒のインタビュー記事が載っていた。

全く、なんて信憑性に満ちた新聞だよ。

噂をまとめるのは簡単だが、噂はあくまで噂だ。

証言によって裏打ちされた、真実ではない。

新聞というのは、真実を告げる読み物だ。

よって新聞部の三人組は、真実を確かめる為に。

噂の出処を突き止めて、その生徒にインタビューしたのだろう。

凄まじいスクープ精神。

さすが、我が学院の新聞部だ。

しかし。

「実際に見たなんて、信用出来るものですか。そのインタビューしたAさんとかいう生徒が、新聞部の回し者でない保証が何処にあるんです?」

幽霊なんて有り得ないと、頑なに信じているイレース。

インタビューされた生徒を、新聞部の回し者呼ばわり。

まぁ、匿名の取材だから、インタビューされた生徒に確認を取ることは出来ないのだが。

「あるいは、インタビューされた生徒が、面白がって虚偽を述べている可能性もありますね。見てもないのに見たとか言って…」

いや、まぁ、その可能性だってゼロじゃないけどさ。

すると、シルナがすかさず。

「うちの生徒は良い子だもん!嘘なんてつかないよ!」

とのこと。

生徒に対する信頼は、誰よりも深いシルナである。

俺だって、生徒が嘘をついているとは思いたくないけどさ…。
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