神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ちなみに、インタビュー記事の内容を抜粋すると。

このAさんという生徒は、「下校間近の第二稽古場で、一人で魔導人形を片付けているときに不気味な黒い影を見た」とのこと。

第二稽古場…昼休みに、生徒二人が噂していた場所だな。

もしかして、このAさんという生徒が、第二稽古場で「見た」という噂の出処なんだろうか。

そして、「見た」と証言しているのはAさんだけではない。

インタビューしている生徒は、他にもいる。

Bさんという生徒は、「自分は深夜ふと目が覚めたとき、学生寮の窓から校舎を見ると、食堂の窓の向こうに黒い影を見た」と証言している。

食堂にも出るのか。

こちらは、先程のAさんとは違って、窓越しに見えたそうだ。

窓越しに、しかも深夜に見たとなると…Aさんよりは信憑性に欠けるな。

それって、ただ寝惚けてただけでは?

ただでさえ深夜で、明かりもないのだから…黒い影と言われても。

何かが動くのが見えたのだろうか?

やっぱり、それってただ寝惚けてただけなのでは?

そして、最後にインタビューされた生徒、Cさんの証言によると。

「深夜、学生寮の窓から校舎を見ると、二人の人影が校舎の窓を上っていた」とのこと。

それって、もしかしなくても、令月とすぐりのことなのでは?

あいつら、マジで夜間外出やめろよ。

幽霊だと思われてんぞ。

無辜の生徒をびびらせるんじゃない。

号外に載っていたインタビュー記事は、この3名である。

最後のCさんを除けば、二人の生徒から幽霊の目撃情報が得られたことになるが…。

…これって、本当なのだろうか?

「悪質なデマか、そうでなければただの見間違いです。単に怯えていたから、幽霊に見えただけです」

イレースは、あくまで幽霊騒ぎはハッタリだと言い張っている。

「うちの生徒は嘘なんてつかないよ!正直な良い子だもん!」

シルナは、あくまで生徒の証言を信じているらしい。

「じゃあ、あなたは本当に幽霊がいるなんて思ってるんですか?」

「え、そ、それは…。…いるかいないかは別にして、生徒はきっと嘘なんてついてないよ」

「ふん。おめでたい頭ですね」

「…」

イレース、手厳しい。

シルナが撃沈してるぞ。気の毒に。

「で、でも…新聞部が号外を配るほど、生徒の間で幽霊騒ぎが広まってるのは、事実だよね」

と、助け船を出す天音。

良かったな。天音が優しくて。

「幽霊の審議はともかく…。こんなに噂が広まってること自体が問題だと思うよ」

何せ、新聞部が特集を組んで、号外を配るくらいだからな。

それだけ、生徒達の関心を引いているということだ。

すると、そこに。

「こんにちはー」

「あ、ナジュ…」

ここにいなかったもう一人の教師が、タイミング良くやって来た。
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