神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「今夜から何日か、幽霊が出るという場所に張り込んで、交代で夜の校舎内を巡回しましょう」

「え、えぇぇぇ!そ、そんな」

シルナが、慌てて声をあげた。

「何です。何か文句でもあるのですか?」

「そ、そ、そんなことして、幽霊に会っちゃったらどうするの?」

良い歳して、幽霊相手にガチビビリのシルナである。

涙目になるな。気持ち悪い。

「もし見つけたなら、丁度良いじゃないですか。捕獲して、正座させて、説教してやりなさい」

幽霊って、正座するのか?

「えー?嫌だなー…」

と、こちらも不満そうなナジュである。

「お前が、幽霊を怖がるとは思わなかったよ」

「別に幽霊なんてどうでも良いんです。夜勤が嫌なんです。折角のリリスとのイチャイチャタイムが…」

成程、分かった。

お前は、誰よりも夜勤に入れ。

「僕も…気が進まないなぁ…。不気味で…」

こちらも、乗り気ではない天音である。

俺だって嫌だよ…。

しかし。

「一週間ほど張り込みをして、『幽霊なんていなかった』と宣言すれば、生徒達も目を覚ますでしょう」

イレースだけは、乗り気だった。

まぁ、そうでもしないと、幽霊の噂は広まっていくばかりだ。

勝手に幽霊の曰くをつけられた第二稽古場にも、人が寄り付かないままだし…。

それなら、俺達がこの目で確かめて、白黒はっきりつけた方が良いのかもしれない。

…気は進まないけどな。

「早速、今夜から始めますよ。下校時間が過ぎたら、第二稽古場に集合してください」

…気は進まないけど。

この際だから、イーニシュフェルト魔導学院に、本当に幽霊が出るのか否か。

教師として、ここで白黒はっきり確かめておくことにしよう。
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