神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「何が危険なの?」

「すぐり君、知らないの?お化けの噂」

と、ツキナは顔を青くして言った。

…お化け?

俺は、『八千代』と顔を見合わせた。

…お化けだって。

「稽古場にね、出るんだって。図書室にも出るって」

「お化けが?」

「うん。皆噂してるもん」

…へー。

それは…興味深い噂だね。

「放課後になったらね、暗くなってきたら出るって。危ないんだよ。お化けに襲われちゃうんだよ」

ガクガクブルブル、とビビっているツキナである。

怖がってるところ悪いけど、この様子もかわいーなー。

お化けにビビるツキナ。

「もしかしたら、この畑にもお化けが出るかしれないでしょ?」

何をしに出てくるんだろうね、そのお化け。

畑で何がしたいんだろう。

「だから、暗くなる前に帰るの!」

成程。そーいうことね。

それで、さっさと部活を終わらせようとしてるんだ。

「うぅ…。怖いよー…。明るいうちに出てきたらどうしよう?」

きょろきょろと、周囲を見渡すツキナ。

明るいうちに出てきたとしても、さすがに畑には出てこないと思うけど…。

それに。

「大丈夫だよ、ツキナ。もしお化けなんか出てきたら、俺が退治してあげるから」

「えっ」

ツキナは、救世主を見る目で俺を見つめた。

おぉ。これって、好感度アップの瞬間なのでは?

「ツキナには指一本触れさせないよ。捕獲して、退治してあげる」

「ほ、本当に?すぐり君、出来るの?」

「勿論。ねぇ『八千代』?」

「うん。魑魅魍魎なんて、人間に比べれば可愛いものだよ」

だよねー。

本当に一番怖いのは、幽霊よりも人間だよね。

人間以上に恐ろしいものはない。

従って、俺達が幽霊を恐れる理由はない。

「何なら、今夜にでも校内を探して、お化けを捕まえてあげるよ」

「本当?」

「うん、任せてよ」

「すぐり君、凄い!」

でしょ?

好きな女の子に褒めてもらったから、俺、ちょっと頑張ってくるよ。
< 27 / 634 >

この作品をシェア

pagetop