神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…と、そんな訳で、消灯時間の後。

俺はいつもの黒装束に着替え、『八千代』と共に学生寮を抜け出した。

毎晩のことだから、もう慣れたものだ。

二人で校舎の鍵を開けて、夜の校舎内に入る。

「どう?お化け、いる?」

「さぁ…見つからないね」

そう簡単に、向こうから会いには来てくれないってことか。

そりゃそーだよね。

「なんか最近、お化けがどうのって騒ぎになってるけど…俺達、見たことないもんね」

「うん。毎晩巡回してるのに、お化けは見たことないね」

俺達はこうして、毎晩消灯時間後に校舎にやって来て。

学院の周辺や、校舎の中をパトロールしている。

が、お化けなんて見たことがない。

いるの?本当に。お化け。

ただの噂なんじゃない?

「どうやったら、出てきてくれるんだろう?」

「さぁ…。灯りを持ってたら、出てこないのかな?消す?」

「分かった」

今夜も、ランタンを持参してはいるけど。

真っ暗な方が雰囲気が出そうなので、ランタンの灯りを消した。

唯一の灯りを消したことで、周囲は真っ暗闇に包まれた。

が、そのせいで俺達が困ることはない。

元々、夜の闇の中は俺達のホームグラウンドなのだ。

灯りなどなくても、周囲の様子は鮮明に見える。

人の気配があれば、俺も『八千代』もすぐに感知する。

悪いけど、夜の闇の中で、俺達が誰かに引けを取ることは有り得ない。

「さーて、何処にいるかな?」

お化け相手に、鬼ごっこを始めようか。

見つけたら速攻捕獲ということで。

いざ、校内のパトロールを始めよう。
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