神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…全く。

ケーキが欲しかったのなら、そう言えば良いものを。

…と、思ったが。

「学院長が、この指とまれっていうから傍に来たのに、気づいてもらえなかった」

「だから、仕方なく自分達で取って食べたんだよ。ねー」

こいつらには、こいつらの言い分があるらしい。

あっそ。

今度からは、お前達はもっと存在感をアピールしてくれ。

忍者じゃないんだから。

結局、俺も、イレースも、ヨーグルトポムポムのご相伴に預かっていた。

イレースは無視して帰ろうとしたのだが、シルナがあまりにも、

「一緒に食べてってよぉぉぉ!ねぇぇぇ!」とうるさかったもんだから。

小さい子なら可愛らしいが、おっさんの駄々っ子なんて、誰得だよ。

気持ち悪過ぎて、吐き気を催したわ。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど…ヨーグルトポムポムが美味しいから良いや」

「あっそ」

恍惚と、嬉しそうにケーキを頬張るシルナである。

ヨーグルトを仕込んだケーキかと思いきや、意外と普通のりんごケーキだった。

味は美味しい。

たまには良いもんだな。珍しいケーキも。

なんてシルナに言ったら、調子に乗って買いまくるから言わないけど。

こういうのはな、たまに食べるから良いんだよ。

毎日食べてたら飽きるだろ?

「はー、幸せ。チョコレートも良いけど、りんごのケーキも美味しいよねぇ。世の中には、甘くて美味しいものがいっぱいだよ」

シルナは幸せそうに、分厚くカットされたヨーグルトポムポムにぱくついていた。

頭の中までお砂糖たっぷりで、結構なことだよ。

シルナから糖分を取り上げたら、何も残らないんじゃないか説、浮上。

…すると、そのとき。

「学院長先生、ちょっと良いですか?」

何者かが、学院長室の扉をノックした。

どうやら来客のようだ。
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