神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「失礼します…」

「ん?お前ら、どうした?」

学院長室にやって来たのは、六年生の男子生徒二人だった。

二人共、何だか困惑した表情である。

…?

しかし、シルナは。

「分かった!君達もヨーグルトポムポムを食べに来たんだね!?」

やっぱり、頭の中まで砂糖でいっぱいだった。

いや、それは違うだろ。

案の定。

「え?よ、ヨーグルト…ボム?」

危険な香り。

「勿論あげるよ!どうぞどうぞ、自分の部屋だと思ってゆっくり…」

「あ、いや…そうじゃないんです」

「…へ?」

お菓子目的じゃないと聞いて、シルナはぽやんと首を傾げた。

…あのな。

学院長室に来る奴らが、皆菓子目当てだと思ったら、それは大きな間違いだぞ。

「シルナは放っとけ。それより、どうしたんだ?」

腑抜けのシルナの代わりに、俺は二人にそう尋ねた。

すると。

「あ、その…実は、さっき…寮に帰ったら、部屋の中に変なものを見つけて…」

「…変なもの?」

学生寮に、何か仕掛けられていたとでも言うのか?

「その…これです」

そう言って。

男子生徒は茶色の、鍵付きの小箱を差し出してきた。

…何だこれ?

何だか、不穏な匂いがする。

「誰かの忘れ物かと思って…」

「…中、何が入ってるんだ?開けたのか?」

「いえ、鍵がかかってるので…」

あ、そうか…。開けようと思っても開けれられないよな。

「周りのクラスメイトにも聞いたんですけど、持ち主が分からなくて…」

「落とし物ということで、先生方に預けても良いですか?」

と、二人が言った。

あぁ、それでわざわざ俺達に届けに来たのか。

じゃ、仕方ないな。

「分かった、よく来てくれたな。これは俺達が預かるよ」

「…お願いします」

二人共、ぺこりと頭を下げた。

しかし、落とし物…ねぇ。

一体誰が何を落としたのか…。

いや、そもそもこれ、本当に生徒の落とし物なのか…?

「それじゃ、失礼します…」

「あ、ちょっと待って!君達、折角だからヨーグルトポムポム食べていって!」

退室しようとする男子生徒二人に、シルナは慌てて声をかける。

「え?いや…宿題があるので、寮に帰ります」

「まぁまぁ、良いじゃない宿題なんて後回しで。そんなのいつでも出来るよ」

おい。

教師として、あるまじき発言。
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