神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
さて、改めて。

「何なんだろうな?これ…」

さっき生徒達が届けてくれた、学生寮にあったという、この謎の木箱。

…本当に誰かの落とし物?忘れ物?なのだろうか。

「開けてみれば良いんじゃないですか?」

基本怖いもの知らずのナジュは、あっけらかんとしてそう言うけど。

「僕は不安だなぁ…。最近、謎の落とし物を見つけて、良かったことなんて一度もないよ」

と、天音は反対していた。

天音、お前良いこと言うな。確かにその通りだ。

園芸部の畑に埋まっていた、白い棺。

学院長室の床に転がっていた、貝殻。

どれもこれも、開けてびっくり、超迷惑な玉手箱だった。

成程、確かに良い思い出は一つもない。

ってことは、俺達はこの木箱を開けてはいけないな。

今すぐ封印して、土の下にでも埋めておくべきだ。

…しかし。

「本当に生徒の私物だとしたら、我々が勝手に処分する訳にはいきません」

シルナを処分したばかりのイレースが、険しい顔でそう言った。

…そうなんだよな。

これが本当に落とし物だとしたら、今頃落とし主が探しているかもしれない。

俺達が俺達の判断で、勝手に埋める訳にはいかない。

「ですよね…。もしかしたら、生徒の秘蔵のエログッズが入っている可能性も、」

「口を縫い合わされたいですか?この色ボケ教師」

「って、天音さんが言ってました」

「えぇぇぇっ!?」

…はいはい、分かった分かった。

…ともあれ。

「イレースの言う通り、勝手に処分する訳にはいかないよな…。…せめて、中に何が入ってるか分かれば良いんだが…」

木箱を揺すってみても、何の音もしない。

木箱の重さからして、空っぽってことはないだろう。

多分、何かが入っている。

それほど重い訳じゃないけど…。

入っているものの予想がつかないな。

「開けてみたいけど…。…どうしたもんかな」

鍵がかかっているんじゃ、開けようと思っても開けられない。
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