神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ガラスの靴と言ったら、大抵の人間は、誰しも思いつくだろう。

童話『シンデレラ』のキーアイテムだ。

えぇと、確か主人公のシンデレラが、舞踏会に履いていったけど。

帰り道、魔法が解ける前に慌てて走ってたら、ガラスの靴が脱げてしまって。

取り残された王子様は、そのシンデレラの忘れ物であるガラスの靴を頼りに、シンデレラを探すんだっけ?

で、ガラスの靴がぴったり合う女性こそが、舞踏会の夜に出会ったシンデレラである、みたいな…。

そんな話だったような。

しかし、うっかり別の人の足のサイズと同じだったら、どうするつもりだったのやら。

まぁ、そこはあれだよ。お伽噺だからな。

…で、そのガラスの靴が。

近頃、俺達の頭痛の種である…。

「…また、イーニシュフェルトの里の魔法道具か?」

「うん…。童話ストーリーの一つ…。『シンデレラ』の仕業だ」

…成程。

もう、あれだな。

貝殻にせよ、木箱にせよ…。蓋のあるものを開けるのはやめよう。

何なら、プッチンプリンの容器を開けるのも躊躇われるレベル。

何が童話シリーズの引き金になるか、分かったものじゃない。

結局、天音の言った通りになったな。

またしても俺達は、嫌な思い出を作ることになりそうだ。
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