神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
Ⅸ〜後編〜
俺達七人は学院長室を出て、学院内を手分けして探し始めた。

学院内の景色は、俺達の記憶にあるものと何も変わらない。

まるで、元の世界のイーニシュフェルト魔導学院そのままだ。

しかし、どんなに元の世界にそっくりでも、この世界は偽物だ。

生徒が一人もいない、空っぽの学院。

こんなの、俺達の知るイーニシュフェルト魔導学院ではない。

そして、窓の外の景色。

学院の敷地の外は、真っ白な空間が広がっているだけだった。

空っぽの学院に、白い景色。

気持ち悪いことこの上ない。

こんな世界に一生閉じ込められるなんて、死んでも御免だ。

ましてや幽霊になるなんて、とんでもない。

何が何でも、ガラスの靴を見つけなければ。

突然の超展開に、困惑している暇はない。

とにかく、制限時間までにガラスの靴を探すのだ。

「ものを隠せそうな場所、って…何処だ…?」

まさか、親切に机の上に置いてある訳じゃなかろう。

ロッカーの中とか?

学院内に、ロッカーがいくつあると思ってるんだよ。

その中を、一つずつ開けて探すのか?

…冗談だろ。

…でも、冗談ではない。

やらなければ、自分のみならず、仲間の命まで危険に晒すのだ。

手間を惜しんでいる場合じゃない。

「くそっ…。やるしかないか…」

俺は、片っ端から教室を巡り。

ロッカーを一つずつ開け、そして机の引き出しの中を探った。

頭おかしくなりそうな作業である。

しかも、ロッカーの中や引き出しの中には、生徒の私物が入ったままになっているのだ。

生徒の私物に紛れて、ガラスの靴が隠されている可能性だってある。

従って、俺はロッカーを開ける度、引き出しを開ける度に、生徒の私物を引っ張り出して、中を探らなければならなかった。

生徒に申し訳ないが、今はそんなことは言っていられなかった。

教師に見られたくないものだってあるよな、ごめんな。

でも、今は緊急事態なんだよ。許してくれ。

…こっそり、煙草とか入ってたらどうしよう?

それはそれで、別の問題が生じるな。

怪しいものが何も出てこないことを祈りつつ、俺は片っ端からロッカーや引き出しを漁った。

…すると。



「…あ?」

二つ目に入った教室の、ロッカーの中に。

何やら、見覚えのある木箱を見つけた。


< 293 / 634 >

この作品をシェア

pagetop