神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
X〜前編〜
――――――…今日の天気は、雨である。

唐突に何だと思われるかもしれないが。

こんなときに天気が悪いと、どうも、お天道様にまで馬鹿にされているような気分になる。

つい先程、シュニィから極秘に報告を受けた。

どうもイーニシュフェルト魔導学院では、暇もなく、立て続けに厄介事に見舞われているらしいな。

白雪姫、オオカミ、人魚姫と来て、今度はシンデレラとは。

忙しい奴らだよ。

…って、俺も人のことは言えないんだけどな。

皆には黙っているが、ベリクリーデが…。

と、思ったそのとき。

俺の執務室の扉が、勢いよく開き。

俺の部下の一人が、半泣きで駆け込んできた。

「じゅ、ジュリス隊長!助けてください…!」

「あー、はいはい。いつものな。で、今日はあいつ、何をやった?」

ベリクリーデか?ベリクリーデなんだろ?

ベリクリーデ案件だよな?今日も今日とて。

ベリクリーデが変なことをしてるから助けてくれ、っていう、いつものパターンだろ。

あいつ、今日は何をやったんだ?

「そ、それが…その…」

「何だ?落ち着いて話せ」

俺だって、もう、あいつが何をしてようと驚かないぞ。

これまで何回、あいつに振り回されたと思う?

今更、ちょっとやそっとのことでは驚かない。

「ベリクリーデ隊長が…隊舎の花壇を荒らしてるんです」

「あー…。うん…成程ね…」

良いか、俺は驚かないぞ。

…で、あいつマジで何やってんの?

花壇を荒らすとかお前。何がやりたいんだよ。

いずれにせよ、どんな理由があっても許される行為ではない。

「分かった。ちょっと…止めてくる」

「い、いつもありがとうございます…」

全くだな。

俺はやりかけた書類仕事を放り出して、ベリクリーデを探して、魔導隊舎の外にある花壇に向かった。
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