神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…ともかく。

事情はよく分からないが。

「ツキナ、お前は学生寮に戻れ」

まずは、ツキナを安全な場所に逃がすのが先決。

援軍が来るにしても、こう言っちゃ悪いが…この場にツキナがいたら足手まといになる。

守るべき対象は、少なくしておきたい。

「で、でも…」

「もう下校時刻も過ぎてる。後のことは俺達に任せてくれ」

令月とすぐりは残ってても良くて、ツキナは駄目なんて、不公平かもしれないが。

令月とすぐりの二人は、それぞれ、自分の身は自分で守れる。

大体こいつらは、帰れと言って素直に帰る奴らじゃないからな。

無理矢理帰らせても、絶対また抜け出してくるに決まってる。

それに、襲ってきたホウキについても、もう少し詳しく話を聞きたいしな。

「だいじょーぶだよ、ツキナ。心配しなくても」

すぐりがツキナに向かって言った。

「すぐり君…」

「何が襲ってきても、俺が倒してあげる。だから安心して」

「…うん」

ツキナは、こくりと頷いた。

全くすぐりの奴、頼もしい限りだな…と思っていると。

「…こっそり自分の株を上げようとしている…。卑怯ですね」

ナジュがぼそっと呟いていた。

株って、何のことだよ?

何はともあれ。

「イレース。女子寮まで、ツキナを送ってやってくれるか?」

「良いでしょう」

道中、何か危険が降りかからない保証はない。

イレースに付き添ってもらえば、安全だろう。

「じゃーね、ツキナ。また明日」

「うんっ…。すぐり君、令月君、また明日ね。ばいばい」

ツキナは、令月とすぐりの二人に手を振り。

イレースに付き添われて、学生寮に戻っていった。

…よし。

ひとまず、これで…万一のことが起きても安心だな。

ここにいるメンバーなら、例え不測の事態が発生しても、自分の身は自分で守れる。

改めて…襲ってきたホウキとやらの話を、令月達に聞かせてもらうとしよう。
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