神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
この暴走ホウキを…封印することは出来ない、だって?

つまり俺達は、目覚めてしまったこのホウキを、一生面倒見なきゃならないってことか。

どんな悪夢だ?

「封印出来ないって…。どうしてですか?」

天音が尋ねた。

俺も知りたい。

「封印耐性が物凄く強いんだ。少々の封印だったら、さっきみたいに自力で無効化してしまう」

…俺の時魔法を解除し、シルナの簡易封印を突破し。

そして今、すぐりの毒魔法によって溶かされてる…はずだが。

それさえも、無効化してしまおうと?

…なんて奴だ。

ただの魔法道具の癖に、その辺の魔導師よりは断然強いぞ。

さすが、『眠れる森の魔女』と呼ばれるだけのことはある。

「ですが、全く封印が不可能だという訳ではないのでしょう?」

イレースは、至って冷静に尋ねた。

「それは…」

「だって、今日この場に復活するまでは、封印されていたんでしょうから」

…確かに。

封印が解かれたから、こうしてこの世に再び現れたのであって…。

それまでは、何者かの手によって封印されていたんだよな?

ってことは、封印が不可能という訳じゃなくて…。

何かこう…特殊な条件下においてのみ、封印は可能と考えるべきなのでは?

…しかし。

現実は、そんなに甘くなかった。

「イレースちゃんの言う通り…。封印…出来ない訳じゃない。全く方法がない訳じゃ…」

「だったら、やりようはあるのでは?」

「…いや、無理だ」

…無理なのか。

シルナが無理だと断言するってことは、本当に無理なんだろうな。

「理由を聞いても?」

「当時、イーニシュフェルトの里でこれが作られたときも…。封印するのに難儀して…」

製造者であるイーニシュフェルトの里の賢者であっても、扱いに困っていたのか。

じゃあ、そんなものハナから作るなよ。

後先考えずに、何でもかんでも作りやがって。

お陰で後世の俺達が、今こうして苦労してるところだよ。

「結局『眠れる森の魔女』を封印したのは、里の中でも封印の魔法を特に得意としている賢者が、5、6人がかりで、三日三晩かけて封印したんだ」

「…」

「あのときでさえ、そんなギリギリの状態だったから…。今、私達が同じことをするのは…」

…成程。

それは無理だな。断言出来る。

厄介度が、段々と加速してきたぞ。

これは…『シンデレラ』に負けず劣らず、かつてない難敵なのでは?
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